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64  鞴橋の紅簾片岩

 旧高越鉱山から県道を下ること2キロメートル、また山川駅から3キロメートルのところ、川田川が高越の山なみを突き破って北へ流れるV字谷がようやく終わるあたりに吊橋がかかっている。これを鞴橋という。この吊橋は水面より20メートルばかりの高さであるが、この橋台が両岸とも珍しく大きい紅簾片岩で、とくに東側のものは、水面より高さ15メートル、横幅8メートル、奥行10メートルの巨大な岩である。
 紅簾片岩というのは、綿雲母石英片岩および絹雲母緑泥片岩の中に紅簾石を含んだ結晶片岩で紅色を呈している。紅廉片岩はその岩層が川田川の浸蝕によってところどころを断ち切られ 川田川の両岸に数か所の露頭が見られる。鞴橋附近ではほぼ東西に走る紅簾片岩の層があり、傾斜は南へ30度の角度をなしている。
 明治の頃、この付近に川田山鉱山(名越鉱山)があって品質のよい斑銅鉱を多く産出していた。そして、この鉱石を橋のかみてで製錬していた。製錬の方法は鉱石を炉に入れコークスを使って焼く原始的なものであるが、そのために空気を送る必要があった。当時の送風機は原始的な鞴であった。たくさんの鞴を使う労働者にちなんで、鞴橋の名がつけられたものと思われる。
 橋の左手の清らかな水の流れる用水路に沿って上流に登っていくと、まもなく左手の斜面にふきがら(銅を製錬した残りかす)を棄てたあとが見られる。対岸は川田山鉱山の廃坑である。
 さらに進むと土地の住民が公害闘争の結果、高越鉱山に作らせたという翁喜台用水のえん堤が見られる。

鞴橋の紅簾片岩