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34  庄屋記録(住友家の記録)

 この記録は,山川町川田天神住友嘉七郎家に保存されていた西川田村庄屋記録である。
 同家は,蜂須賀氏が阿波入国以前からの土地の名門で,代々西川田村庄屋を勤め,明治に至っている。この記録は,4代五助,5代冶五右衛門,6代嘉七郎の3代の庄屋が,天正元年(1573)から安永5年(1776)までの204年間のできごとを年代順に書きつけたもので,生漉和紙534枚に毛筆で書かれたものである。特に本記録の2番目の筆者治五右衛門は有名な力士「一本」である。一本は角力も強かったが,庄屋としてもりっばに勤めていた。
 この記録の大切な理由は,およそ歴史は,事実に基づいて作らねばならないのに,今までの歴史は与えられた歴史,治者側の歴史であった感がある。庶民の生活に根ざしたものに書き換えられるべきものである。この点からみて,庄屋が200年にわたって書いた記録は,今後の歴史を作る上に大切であり,県下にも稀なものである。
 この記録の貴重なことに着目したのは,元山瀬中学校教頭黄田菊夫であった。そして山川町教育長鹿児島進七は,難解な本記録の原文を解読し「住友家記録」として昭和43年11月にこの解読書は,県内外にも頒布されて活用されている。
 ちなみに,原本は町文化財保護委員会が住友家から寄附を受け解説書とともに保存している。